桂望実『明日この手を放しても』

明日この手を放しても (新潮文庫)

明日この手を放しても (新潮文庫)

映画化もされた県庁の星はまだ読んでないけど、『死日記』『ボーイズビー』は好きで、この本も良かった。
好きなところ。以下引用。

「人って不思議だって話だろ?いろんなことがあってさ、もう心の中、トンネルみたいに奥まで空洞が続いてるって感じになってんのに、それ以外のことは今まで通りだったるするんだよ。腹は減るし、爪も伸びるしな。

俺なんか親父が心配だったり、親父に腹立てたり、親父は生きてますようにって祈ったりしてる二秒後には営業電話をかけてる、っていうか、かけれる自分にびっくりしてる。たまたま営業がうまくいきゃあ、ちょっと喜んだりしてな。そんで、喜んだ後にはちょっと後悔したりしてな。もしかしたら親父は誰かから痛い目に遭わされているかもしれないってのに、喜んでる場合かって自分を責めるんだ。」
意外だった。兄も、私と同じように喪失感を味わっていたなんて、思ってもみなかった。いつもちょっとしたことで怒って、なにかに文句を言ってるだけだと思ってた。

文句ばっかりの兄と潔癖症で中途失明者の妹の12年間。
あー兄弟っていいな。そう思わずにはいられない。


今日は母の日です。感謝の気持ちはなかなか言葉では伝えれない。